第一段階
関心
「関心」とは,相手への好奇心という積極的な感情,または相手のパーソナリティに興味 を持っている状態のことを指す。
他者との交流に際しては,人は相手と出会うこと への関心と,相手の文化や行動規範に対する興味関心が先行する。
それらがなければ,人が 行動に駆り立てることは難しく,自らの視野の拡充も行えない。言い換えると,関心を持つ ことが,自らのコンフォート・ゾーンから抜け出す動機となり、他者との交流に踏み出す第 一歩である。
第二段階
観察
他者や他者の文化を認知し,関心を持った後には相手の態度や行動と観察し始める。観察 とは,「物事の状態や変化を客観的に注意深く見ること」と定義づけられている。ここでい う「観察」は,相手の性格や文化,自分に対する印象などの様々な項目を的確に注意深く見 極めていくことである。単純に,他者そのものや他者の行為だけを見ることは観察とは言え ず,交流学習における重要要素とはならない。「観察する力」には「知識力」と「想像力」 が伴っており,それらを駆使して他者の深層部分を注視することにより,次にあげる「交 流・協働」へと移行できる。
第三段階
交流
交流場面では,交流する他者との心の距離が接近と共に話す話題も一般的話題(表層文 化)から個人の内面(深層文化)へと移行していく。
交流を通じて他者との対話を重ね,人の深層部にある価値観に接し,それを自分自身の価 値観と比較することが自己理解の手がかりとなる。
第四段階
協働
協働は,交流の一歩先に進ん だ相手との関わりであり,多文化共生社会に求められるのは,友情でとどまらない協働力のことを指す。交流では違いの認識まででよかったが, 協働段階では違いとの向き合い方までもが重視される。意見の相違がより拡大した場合には, 相違点と向き合うスキルも求められる。
第五段階
熟考
異文化対応力を強化するために異文化者と交流するのであれば, 交流を振り返ってこそ糧となる。「交流をすると異文化理解が深まる」のではなく,「交流を 振り返り新たな気付きを得てこそ異文化理解が深まる」のである。
第六段階
自己内省と言語化
他者との交流,対話を通じて自らの感性や価値観に気づくというプロセスは,自己理解と 他者理解の間の密接な関係性を示している。他者との比較なしに自分自身を見つめることは 困難であり,他者への関心,他者との交流を通じて初めて「多面的・多角的・総合的」に自 己を理解するのである。
さらに,相手と言語を使ってコミュニケーションを取る以上,そこから問い直された自己 のアイデンティティも言語化することが重要である。言語という鏡を通して自分を振り返り,客観的 に自分の文化を分析することで自己内省を促進できる。